歴史観光? まち歩き? 否! これは、「個人の記憶」を題材にした、 細やかだけど妄想のスケールは壮大な「遠足」なのです。

東京都小金井市。
東京のほぼ真ん中に位置し、主に暮らしの舞台・ベットタウンとして栄えてきた街。大学も多く有し、学生たちで賑わう文教地区でもあります。
「住んでいる」、「通学している」などの理由がなければ、わざわざ足を運ぶことがそれほど多くない街ではあるけど、当て所なくぶらりと歩いてみれば、住宅街に混在する林や農地、どこに通じるのかわからない砂利道、「はけ」と呼ばれる緩急バラエティに富んだ坂道、各地に点在する無人野菜販売所の存在などが、開発・整備された郊外の風景に交じり合いながら私たちに「原風景のカケラ」をさり気なく投げかけてくれます。


そんな小金井の街が《誰もが芸術文化を楽しめるまち》となり、より豊かに暮らしやすい場となるように。この願いをもとに、小金井アートフル・アクション!(小金井市芸術文化振興計画推進事業)は、これまで小金井市内で様々なプロジェクトを行って参りました。


その過程で近年着目してきたのは、「記憶」です。


それは大きな「歴史」とはまた違った、この小金井で生活する市民ひとりひとりの「私」が、日々歩き、日々遊び、日々学校に行き、日々買い物をし、日々仕事をし、日々家族と触れ合うなかで育まれていった極私的な「記憶」の集合体を指します。
かつてあった「開かずの踏切」、「旧公会堂」、あの「通学路」、あの「パン屋の味」、溜まっては乾いてまた溜まってを幾度となく繰り返すあの「砂利道の大きな水たまり」……。これらは確かに小金井の街に根づいた記憶ですが、しかし一方で、こういった極私的な記憶は「土地」を超えて、ある普遍性を持って様々な人たちに対してその人固有の「想起」へと誘うことがあります。


本企画「想起の遠足」では、この小金井を「記憶を触発してくれる街」と捉え、市民が様々な遠足企画を準備しました。まずは街全体を集団で語らいながらそぞろ歩く「想起の大遠足」。そして、市民がまちの様々な記憶のカケラをもとに創作した遠足を一挙に開催する「想起の遠足コレクション」など。歩いたり、走ったり、話したり、書いたり、食べたり、描いたり、聴いたり、歌ったり、遠足の楽しみ方は多種多様。小金井市民はもちろんのこと、市外の方もご自身のまちの記憶へとつながるきっかけが必ず見つかるはず。


昨年夏、小金井宮地楽器ホールで好評を博した展覧会「想起のボタン」の続編。皆さんの幅広い参加をお待ちしています。


ゲストディレクター アサダワタル(文化活動家・アーティスト)

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